イソヨコバサミ Clibanarius virescens (Krauss, 1843) 葉山 権太郎岩
2016年 05月 26日
しかし、前にも書いたが、ヤドカリについて言えば、大抵ヤドカリはヤドカリであり、それ以上のものでもそれ以下のものでもないのが一般的だ。
ヤドカリをそれぞれちゃんと種名で呼んでくれるのは、オタッキーダイバーと研究者、そしてアクアリストという水槽飼育の皆さんくらいなものだ。
分類上、僕もオタッキーダイバーに属するのだろうが、それほどヤドカリについて知っているわけではない。
ただ、”それ、イソヨコバサミですね”と、極めて普通種のこの子を指差しただけで、”ヤドカリ、お詳しいですね”と言われるのが現状なのだ。
ヤドカリは、分類がそんなに進んでいないこと、見分けにくいこと、殻から中々出てこないこと、そして、目つきの悪いのが多いことなどが、名前の普及を妨げている大きな要因かもしれない。
このイソヨコバサミは、本州の磯や浅場で最もよく見られるヤドカリの一つだ。
ヤドカリの触角は、短い方が第一で長い方が第二なのだが、このヤドカリの第二触覚は、真っ青で特徴的だ。
鋏脚は左右同じ大きさで、クリーム色の斑点がある。
また、鋏脚と歩脚の先も、クリーム色となっている。
目つきが悪いヤドカリの多い中で、この子の目は粉砂糖を塗したようなつぶらな瞳を持っている。
実に可愛いヤドカリだ。
普通種、侮れないぞ。